クリエイティブ:クラフトジャーナル

19世紀の節約精神から生まれた 
アメリカンクラフト、「フックド・ラグ」

何より大切なのは
世界にひとつしかない
あなたらしさを表現すること
アメリカでなによりも尊敬されるのはオリジナリティ。個性ある独創的なものに敬意が払われます。
小林恵さんはそんなアメリカ文化を日本にも伝えたい、
とフックド・ラグを通して日本で指導してきました。
今年、東京で開催された「日米フックド・ラグ」展。今回はその作品を御紹介します。
文:小林恵
 表的なアメリカンクラフト二つをあげるならキルトとフックド・ラグです。どちらも19世紀中ごろから社会現象のように、アメリカ中で作られたものです。
 つなぎ合わせる事で連続模様ができるキルトは思考する面白さと発見があり、フックド・ラグは即興的に自分を表現する楽しさがあります。何とかして家を美しくしたいと願う住まいへの執着と、自分らしさを暮らしに添えたいという自己表現への願望から生まれたものです。もし寒さをしのぐだけの理由であればデザインを施す必要が無いのですから。
 新大陸に移り住み、自分の家を建てることへの夢と情熱は、現在でもアメリカ人の共通の憧れです。美しい住まいを隣人に披露する喜びは、アメリカ生活の基本的習慣で、それが社交の一つになっています。
アメリカの作品20点、日本の作品22点、計42点を展示。TEPCO銀座館の会場は記録的な入場者数だった。
有吉煕「最後の進水式」「自分の手で作り上げた満足感を初めて味わった」と創作の喜びを語る唯一の男性の作品
村田春代「家族旅行記念」一生懸命働いたお父さんの退職を記念しての家族旅行。一家で初めて同じものを並んで見つめた感動の瞬間。
 フックド・ラグはリサイクルアイデアです。実用的であるため、ウールが主な材料ですが、かぎ針でフック(ひっかける)できる材料であれば何でも利用しました。
 デザインは即興的に作るものです。やりたいことを表現する。その人らしい個性のある独創的なものに敬意が払われます。評価は上手下手ではありません。
 150年も前に作られたフックド・ラグが現在オークションで何十万ドルで買われています。古いからではありません。たとえラグがボロでも、個性的であれば高いお金を支払って買う人がいます。これもオリジナリティを評価している証拠。このあたりからもオリジナリティを尊ぶ土壌がアメリカにはあったのです。
小林恵「アメリカの“発明の才能”に乾杯」エンジェルが“アメリカの才能を知っていますか”とラッパを吹き、作者は“やられているわ”と。

自分で考えて作ると達成感が自信に

 ューヨークに住んで6年目の1970年に、私はアメリカのキルトとフックド・ラグの本を持って日本に里帰りしました。そして1980年キルト事典を執筆し、それから数年間キルトの公募展の審査をしたのですが、日本とアメリカの大きな違いは独創性だと痛感しました。
ハウツー本を頼り、布を変え、セッティングを変えるだけで、限り無くデザインは生まれます。しかし、一般的に日本人はオリジナリティに欠けます。
Emily Robertson「卒業式」角帽の上に“雇ってください”と卒業式でデモをした時の思い出を1枚の絵に託して。
不破美晴「ファミリーツリー」子供を大切に育てる美晴さんの一家の手足を、蝶々やカニにデザインした優しい家族の記録。
 そこで私はフックド・ラグでオリジナリティを発揮する発想法を教えることにしました。その結果が今回の「日米フックド・ラグ展」。日本人の作品は、私が春と秋3ヶ月ずつ、2カ年帰国して教えたクラスのもので3分の1は処女作です。
 作品のテーマは「セレブレーション」。記憶に残るそれぞれの印象、祭り、出来事をフックしたものです。できる限り個性を尊重し、手取り足取りで教えないことを鉄則にしました。自分で考えて作る。するとでき上がったときの達成感が自信につながります。
Alice Rudell「収穫感謝祭のパレード」ニューヨーク恒例のパレード。セントラルパークウエストに並ぶ人々や歓声が聞こえてきそう。
Linda Rae Coughlin「自分にうち勝つ」人生の悩みを乗り越えて、悟りの境地に到達できた自分への賛歌を巧みなタッチで表現している。
 さて30年も経験のあるアメリカ人の作品と比較してどうでしょう。日本人もうまいと思うでしょう?
 さあ、皆さんもあなたしか作れない財産を残してみませんか。
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フックド・ラグ展
日米の個性あふれる作品を公開!

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Maggie McLea
「南西部の砂漠」
村田ひろみ・坂本洋美・川間多希子「鯉のぼり」
Patricia Merikallio
「トリック・オア・トリート」
Laurie Ling
「勤労感謝の日、農場の週末」
福田節子
「花火大会」

金子和子
「アメリカの印象」
木村静子
「ねぶた祭り」
慶野えり子
「日本のイメージ」
小林和子
「ニューヨーク展示を記念して」
佐野妙子
「夫・勤続30年」

佐藤宣子
「中秋の名月」
佐藤裕子
「21世紀への展望」
Joan Stocker
「タイムズスクエア」
Cindy Spence
「40歳になる」
豊田幸子
「動物愛護」

南雲まどか
「花見」
平岡婦久
「双児の初孫」
Jule Marie Smith
「冬至」
福田美津江
「鯉のぼり」
藤田久美子
「夏祭り」

松井晴美
「私の家族」
水野紀子
「日本の四季」
宮本智子
「家族の仲間」
Betty Oberstar
「クリスマス・フォックス」
山本睦美
「合唱コンクール」

Mary Alenstein
「クリスマスの天使」
Marilyn Bottjer
「独立記念日」
Susan Smidt
「希望」
June Myles
「2月2日」
Peg Irish
「アンとペッグ・ショー」

Ann Erskine
「生命の賛歌」
Olga Rothschild
「結婚15周年」
Gail Dufresne
「パーティ・アニマル」
Roslyn Logsdon
「誕生日を祝う」
Gail Horton
「水曜日の夜のレース」

(株)主婦と生活社 別冊美しい部屋
『私の手作り』No.34
掲載転載許可済み
日米フックド・ラグ展「暮しの詩」
東京展
TEPCO銀座館6階
2001年2月1日〜13日まで行われました。

詳しくは、
日米草の根文化交流アソシエーションのページまで>>

展覧会の報告はこちらまで>>

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